(私的)数学基礎論、数理論理学、集合論の文献紹介

2024年4月24日現在まだ書きかけです。

私が主に学部1年から修士1年にかけて数学基礎論、数理論理学、集合論の勉強で読んできた、または参考にしてきた基本的な文献を紹介します。(M2は半年しかしてないことに加えて、研究で潰れたのでB1からM1までとしています。) あくまで個人的な記録ですが、参考になれば幸いです。真面目に書評などはするつもりはありません。文献の羅列と感想を述べています。

私の専門及び興味は集合論、特に記述集合論、決定性公理、内部モデル理論、強制法公理です。集合論の分野でも疎いものがいくつかあります。特に基数不変量は勉強したことがありません。また私の興味のある記述集合論はかなり集合論に寄っています。


数学基礎論、数理論理学、そして集合論以外の各分野の基礎

新井数学基礎論

B1の前期に東大の書籍部で買った。B1の頃に完全性定理などの証明はここで読んだ。最初読んだ時はよくわからなかった。モデル理論パートもそのままB1、B2の時に読んだ。計算論、証明論パートは読んでない。4分野がまとまっているので眺めていると面白い。

Kunenの数学基礎論講義

買っただけであまり読んでない。参考にはなると思う。

Sipserの計算理論の基礎1、2、3

計算論の本。B2のあたり(だったはず)でゼミで読んだ。読みやすい。全部読む価値はあると思う。

SoareのTuring computability

計算論の本、Sipserよりは発展的。B3あたりにゼミで全部読んだ。計算論の基本的な部分は一通り書いていると思う。勉強になった。とても読みやすい。

Tent, ZieglerのA course in model theory

学部の長い間をかけてゼミで読んだ。前半はモデル理論の基礎、後半はかなり難しい。後半の証明を解読するのにかなり苦戦した記憶しかない。

ゲーデルと20世紀の論理学1、2、3、4

主に集合論の刊(青色)をよく眺めていた。参考になると思う。

SimpsonのSubsystems of Second Order Arithmetic

逆数学の本。通称SOSOA。B3の時にゼミで前半を読んだ。逆数学の文献でこれ以外のは私は残念ながら知りません。


集合論の基礎的な文献

私の場合はB1の頃に人の話を聞いた結果、とりあえずKunenか何かしらで強制法を勉強し、Kanamoriで巨大基数を勉強しないと始まらないなと思ったのでまずそれらを勉強しました。

Kunenのset theory

集合論の本。強制法の入門書。強制法を知らないと集合論できないので何かしらで勉強することになるが、その入門のための標準的な本。日本語訳がある。B1で読んだ。でもちゃんと強制法がわかったなと思ったのはずっと先だった。

Jechのset theory

集合論の本。分厚い鈍器。Chapter1は集合論を学びたての時に参考になる。(Filterの章とかstationary setの章とか) 後半は集合論の発展的なトピックがまとめられている。全部真面目に読んだことはないが、B4の時には大体何が書いているかわかっていたので軽く思い出したい時や辞書として使いたい時に開いていた。

Schindlerのset theory

集合論の基本的なところからスタートして、強制法や巨大基数、さらに発展的なトピックまで書いてある。Kunenの補助になるかも。後半はこの本にしか詳細が書いてないことがいくつかある。ありがたい。

Kanamoriのthe higher infinite

巨大基数の入門書。まずは前半の組み合わせ論パートを読んだ方がいい。それだけでもわかる話がずっと増える。記述集合論のパートはそれに興味があったら読むといいかも。最後の決定性公理のパートは他にいい文献がある。

Baumgartnerのiterated forcing

反復強制法の入門の文献。ちょっと古いとは聞いたことがあるが、自分は十分勉強になったと感じた。必読に値すると思います。

Abrahamのproper forcing

Handbook of set theoryにある。proper forcingの基礎が書いてある。

山本啓太さんのProper Forcing Axiomの無矛盾性

昔ネットサーフィンをしていた時に見つけた修士論文。PFAの無矛盾性証明が書いてある。丁寧に書いてあって参考になる。他の数学書とかであまり書いていない命題の証明とかが書いてある。ありがたい。

Foreman, Magidor, ShelahのMartin's Maximum, Saturated Ideals, and Non-Regular Ultrafilters. Part I

通称FMSまたはMM論文。もはや集合論の基礎的な文献と言っていいだろう。Martin's Maximumの無矛盾性証明とMMから出る帰結をいくつか証明している。Semiproper forcingがRCS iterationで反復できる証明は認めてしまってもいいと思っている。(諸説あり。) Laver functionに関してはJechに書いてます。必読に値すると思います。

Feng, JechのProjective Stationary Sets and Strong Reflection Principle

PSRP(or SRP)を導入している。基礎的な文献と言えるかはちょっと微妙だが、MM論文を紹介した後なので置いておく。PSRPのアイデア自体も素朴だし、それから色々MMの帰結が出る証明もワクワクして面白い。自分が一番好きな論文。


Advancedな集合論の文献(内部モデル理論、記述集合論以外)

ForemanのIdeals and generic elementary embeddings

Handbook of set theoryにある。B4のセミナーで前半を読んだ。イデアルの話が色々書いてある。普通に今も役に立っている。

AbrahamとMagidorのCardinal arithmetic

Handbook of set theoryにある。B4の時にセミナーで読んだ。これでpcf理論に入門した。

EisworthのSuccessors of Singular Cardinals

Handbook of set theoryにある。B4の時にセミナーで読んだ。Singular combinatoricsのことが色々書いてある文献。

Cummings, Foreman, MagidorのSquares, scales, and stationary reflection

B4の時にセミナーでEisworthの後に読んだ。

TodorcevicのA note on the proper forcing axiom

PFAからの帰結のいくつかを証明している。Side conditionを使った議論が書かれている。

NeemanのForcing with sequences of models of two types

Side conditionの勉強で読んだ。Side conditionを使う話を聞く時にそこの部分で置いてかれることはなくなった。

ShelahのProper and Improper Forcing

読めたためしがない。参考文献として挙げられているときにこの本を開くが、参考にすべき箇所でどこか1ページをちゃんと理解できた記憶がほとんどない。毎回解読を諦めて、キーワードを拾い集めてより読みやすい論文を見つける助けとしている。

Holz, Steffens, WeitzのIntroduction to Cardinal Arithmetic

内容はタイトルの通り。たまに眺めている。


内部モデル理論の基礎的な文献

SchindlerとZemanのFine structure

Fine structure theoryの基礎が書かれている。Handbook of set theory の一部。かなり丁寧に書かれている。

SteelのAn outline of inner model theory

Handbook of set theoryの一部。あくまでoutline。

MitchellとSteelのFine structure and iteration trees

通称FSIT。基礎的な文献のはずだが読めない。間違いがたくさんある。人の助けを借りないとかなり大変だと思う。

JensenのManuscript on fine structure, inner model theory, and the core model below one Woodin cardinal

Ronald B. Jensenのホームページで利用可能です。非常に長いが、FSITよりはるかに丁寧に書かれている。FSITとは異なり、内部モデル理論を勉強したい学生が一人でも読めるように書かれています。FSITとは使っているfine structureの流儀が異なる(、あとindexingも違う)。

SteelのThe Core Model Iterability Problem

通称CMIP。Kの理論。

SteelとWoodinのHOD as a core model

HOD computationの全てが書かれている文献。後述のcabalの文献の1つ。絶対読むべき文献。

Farahのthe extender algebra and \(\Sigma^{2}_{1}\)-absoluteness

Extender algebraについて書いてある。

Schindler, SteelのCore model induction

Core model induction in L(R)が書かれた本。難しい。


記述集合論、決定性の基礎的な文献

2種類の大まかな分類をしようと思います。

(ほとんどA) MoschovakisのDescriptive set theory

ほとんど(A)の内容だが、一部(B)の内容が入ってくる。しかし巨大基数を使う際にはきちんと導入されている。記述集合論の入門書。まずはこれを読むと良い。Notationや書き方が独特な気がする。演習問題が多い。

(B) SolovayのA Model of Set-Theory in Which Every Set of Reals is Lebesgue Measurable

Solovay modelの論文。タイトルの通り。難しい。Kanamori, Jech, SchindlerにもSolovay modelの章がある。

(B) MartinのDeterminacy of Infinitely Long Games

Martinによる決定性の無矛盾性証明が書かれた本。\(\Pi^1_1\)-決定性の証明とMartin--Steelの定理(PDの無矛盾性)の証明が書かれている。

(B) Martin, SteelのA proof of projective determinacy、および Iteration trees

Iteration treeを導入してPDの無矛盾性を証明したり,Woodin基数を含む(fine structuralでない)内部モデルを構成している。

(一部B) Larsonのthe stationary tower

(B)を勉強する際に必須となるStationary tower forcingについて書かれている。ADの無矛盾性を示す際に最初はstationary tower forcingを使うことになる(はず)なので、その際はこれを読むと良い。

(B) SteelのThe Derived Model Theorem

WoodinのDerived model theoremの証明が書いてある。Homogeneously Suslin, weakly homogeneously Suslin, universally Baireの関係性も書かれている。Stationary tower forcingの知識が必須。

(B) NeemanのDeterminacy in \(L(\mathbb{R})\)

Handbook of set theoryの一部。Neeman styleのgenericity iterationを使ってAD in L(R)の無矛盾性証明をしている。

(B) SteelのA stationary-tower-free proof of the derived model theorem

Genericity iterationを使ったderived model theoremの証明。stationary towerを使った証明とこっちの証明、どちらも重要だと思う。

(A+B) LarsonのForcing over models of determinacy

Handbook of set theoryの一部。Pmax forcingを勉強する際にはこれをまず読むと良い。怠惰のためM1の時に読んだが、さっさとB3ぐらいで読んでおけばよかった。

(A+B) WoodinのThe axiom of determinacy, forcing axioms, and the nonstationary ideal

WoodinによるPmax関連の研究や結果がたくさん書いてある本。Jechに並ぶ鈍器。胸に潜ませておけば暗殺されそうになっても助かると思う。バイブル。

(B) Asperó, SchindlerのMartin's Maximum\({}^{++}\) implies Woodin's Axiom \((\ast)\)

未解決問題であったタイトルの通りのことを示した論文。デカいcollapseに行ってPmax conditionを見つけてそれを引き戻す議論がある。

(A) Wilsonのthe envelope of a pointclass under a local determinacy hypothesis

Envelopeの理論が書いてある。Kechris--Woodinの結果などはこの理論から直ちに出る。

(A) Koellner, WoodinのLarge cardinals from determinacy

Handbook of set theoryの一部。決定性公理からどのようにして巨大基数(Woodin基数)を持つZFCのモデルを見つけるかについての結果がたくさん書いてある。

(A) JacksonのStructural consequences of AD

Handbook of set theoryの一部。Suslin cardinalの解析の理論が書いてある。後述のCabalの結果のいくつかがベースとなっている。

(A+B) Feng, Magidor, WoodinのUniversally Baire sets of reals

universally Baireを導入した論文。

(A) KetchersidのMore structural consequences of AD

AD^{+}の理論が書いてある。AD^{+}の定理に関してunpublishのものがいっぱいあるため、基本的なことを書いてくれているだけでもありがたい。

(A) Steel, Trangの\(\mathrm{AD}^{+}\), derived models, and \(\Sigma_{1}\)-reflection

\(\mathrm{AD}^{+}\)のreflectionを用いた特徴づけの証明が書いてある。

(A) Paul B. LarsonのExtensions of the Axiom of Determinacy

\(\mathrm{AD}^{+}\)の理論が一通り載ってる。\(\mathrm{AD}_{\mathbb{R}}\)の話も書いてある。すごい。

(A) Caicedo, KetchersidのA trichotomy theorem in natural models of \(\mathrm{AD}^{+}\)

\(\mathrm{AD}^{+}\)。

(B) Martin, SolovayのA basis theorem for \(\Sigma^{1}_{3}\) sets of reals

Martin--Solovay construction。

(A) Harrington, KechrisのOrdinal games and their applications

Harrington--Kechirisの定理。自分はブラックボックスにしてます。

(A+B) Cabal seminarの文献たち

決定性の理論がめっちゃ発展した時代の立役者。以下で細かい文献を羅列するがとりあえずCabalとしてひとまとめで書いておく。新しいバージョンの本が出ている。全部買った。出てくる議論の1つ1つが決定性の議論で重要になるものばかり。バイブル。

(A) Kechris, MoschovakisのNotes on the theory of scales

Cabal。Cabalで一番最初に読んだ文献。基本的なところが一通り書いてあるMoschovakis本読んだらこれを次に読んだらいいと思う。

(A) KechrisのAD and projective ordinals

Cabal。Cabalで2番目に読んだ文献。射影順序数について多くのことが書いてある参考になる。Jacksonの結果は書いてない。

(A) WesepのWadge degrees and descriptive set theory

Cabal。Cabalの文献の中で3番目ぐらいに読んだ。Wadge hierarchyの基本事項とseparation, reduction, pwoの基本的なことが書いてある。

(A) SolovayのThe independence of DC from AD

Cabal。\(\mathrm{AD}_{\mathbb{R}}\)の基本的な事項はここに書いてある。絶対に読んだ方がいい。

(A) Steel, WesepのTwo consequences of determinacy consistent with choice

Cabal。元祖Forcing over models of determinacy。今はPmaxの方を読めばいいと思う。

(A) SteelのClosure properties of pointclasses

Cabal。Suslin cardinalの解析の基礎となる文献の1つ。

(A) Kechris, Solovay, Steelのthe axiom of determinacy and the prewellordering property

Cabal。Suslin cardinalの解析の基礎となる文献の1つ。

(A) Martin, Steelのthe extent of scales in L(R)

Cabal。L(R)のlargest scaled pointclassについて。次にscales in L(R)を読むと良い。

(A) SteelのScales in L(R)

Cabal。L(R)のscaleについて完全に解析した論文。

(A) MoschovakisのScales on coinductive sets

Cabal。タイトルの通り。読む優先度は低いかも。

(A) Martin, Woodinのweakly homogeneous trees

Cabal。\(\mathrm{AD}_{\mathbb{R}}\)があるときに任意のtreeがweakly homogeneousであることを証明している。ここに出てくる議論は\(\mathrm{AD}_{\mathbb{R}}\)を使う際によく出てくる気がする。

(A) KechrisのA coding theorem for measures

Cabal。Martin--Woodinと同様にここに出てくる議論は他でもたまに見る気がする。half \(\mathrm{AD}_{\mathbb{R}}\)はここに書いてある。

(A) Martin, Steelのthe tree of a Moschovakis scale is homogeneous

Cabal。決定性のもとでhomogeneously SuslinとSuslin-co-Suslinが同値であることを示している。

(A) Kechris, Woodinのthe equivalence of partition properties and determinacy

Cabal。Kechris--Woodinはこれ。Core model inductionのinner model theory抜きをやってる。

(A) Kechris, Kleinburg, Moschovakis, Woodinのthe axiom of determinacy, strong partition properties, and nonsingular measures

Cabal。通称KKMW。タイトルの通り色々書いてる。

(A) Steelのa theorem of Woodin on mouse sets

Cabal。Mouse sets theoremの文献。\(\Gamma\)-Woodinはここに書いてあるがcanonical termを使ってない。


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